ゴミ屋敷の中でも特に目を引くのが、服で埋め尽くされた部屋の光景です。タンスやクローゼットに収まりきらず、床やベッドの上、時には通路までが服の山で覆われる状態は、単なるおしゃれ好きとは一線を画します。この現象の背景には、様々な心理的要因と社会的背景が複雑に絡み合っています。まず、「ためこみ症」の典型的な症状として、服の収集癖が挙げられます。服はデザインや色、素材が豊富で、次々と新しいものが発表されるため、収集欲を満たしやすいアイテムです。特に、値段が手頃なファストファッションの普及は、ためこみ症の人々にとって、服をため込むハードルをさらに下げていると言えるでしょう。買っても買っても満たされない心の隙間を、新しい服で埋めようとする行為がエスカレートするうちに、手の施しようがないほどの量になってしまうのです。次に、服が「自己表現の手段」としての意味を失い、単なる「物」として認識されるようになることがあります。ファッションへの興味を失い、あるいは社会的な交流が減ることで、服を着ること自体への意味を見出せなくなる一方で、物を所有することへの執着だけが残る状態です。これにより、服が本来の機能を果たさずに、ただの物として堆積していくことになります。また、過去の「喪失体験」や「トラウマ」も服をため込む原因となることがあります。大切な人を失った悲しみや、過去の失敗からくる自己否定感などを抱えている場合、物をため込むことで、失われたものを補おうとしたり、安心感を得ようとしたりする心理が働くことがあります。服一枚一枚が、過去の自分や失われた時間と結びついているため、それらを捨てることは、さらに深い喪失感を味わうことにつながると感じてしまうのです。さらに、高齢化や認知症の進行により、服の整理整別が困難になったり、同じ服を何度も買ってしまったりすることも、服が溢れる原因となります。ゴミ屋敷における服の問題は、単なる散らかりではなく、その人の人生観や精神状態、そして社会とのつながり方を映し出す鏡であると言えるでしょう。