「ゴミ屋敷が増えている」という社会問題が深刻化する中で、高齢者や障がいを持つ方の生活を支える「ヘルパー」の存在が注目されています。しかし、ゴミ屋敷化してしまった住居へのヘルパーの介入は、多くの課題をはらんでいます。ヘルパーは、身体介護や生活援助を通じて、利用者が自立した日常生活を送れるよう支援することを主な業務としています。例えば、掃除、洗濯、調理、買い物などが生活援助の範疇に含まれます。ゴミ屋敷の住人の中には、高齢や病気、障がいが原因で、これらの家事を行う能力が著しく低下し、結果としてごみが溜まってしまうケースが少なくありません。このような状況において、ヘルパーが介入することで、ある程度の生活環境の改善が期待されます。しかし、ヘルパーの業務範囲には明確な制限があります。彼らの仕事は、あくまで「利用者の日常生活の援助」であり、専門的な「ごみ屋敷の片付け」ではありません。大量の不用品やごみの撤去、いわゆる「特殊清掃」に当たる作業は、ヘルパーの業務範囲外とされています。また、ヘルパーが利用者宅で作業を行う際には、安全確保が最も重要です。ごみの山で通路が塞がれていたり、足元に危険物があったりするゴミ屋敷では、ヘルパー自身の安全が保証されず、満足なサービスを提供できないという問題も発生します。特に、感染症のリスクや害虫・害獣の発生など、衛生面での不安も大きいです。さらに、ゴミ屋敷の住人の中には、認知症やためこみ症などの精神疾患を抱えている方も少なくありません。このような場合、ヘルパーが片付けを提案しても、本人が拒否したり、片付けた物をまた集めたりすることもあります。ヘルパーだけでは対応しきれない、専門的なアプローチが必要となるケースも多々あります。現状では、ヘルパーはゴミ屋敷化の「兆候」を早期に発見し、関係機関(地域包括支援センターや福祉事務所など)へ報告する重要な役割を担っています。しかし、根本的な解決のためには、ヘルパーの役割を超えた多職種連携や専門機関の介入が不可欠なのです。
ゴミ屋敷問題とヘルパーの役割