賃貸マンションの一室がゴミ屋敷と化し大家さんや管理会社からの度重なる注意勧告にも応じない。このような状況が続いた場合最終的にその住人は法的な手続きによって部屋からの「強制退去」を命じられる可能性があります。強制退去は住人にとって住む場所を失うという最も重い結末ですが、それはどのような場合に実行されるのでしょうか。大家さんがゴミ屋敷の住人に対して強制退去を求める法的な根拠となるのが「信頼関係破壊の法理」です。賃貸借契約は大家さん(賃貸人)と住人(賃借人)との間の信頼関係の上に成り立っています。住人は家賃を支払う義務だけでなく部屋を善良な管理者として注意を払って使用する義務(善管注意義務)を負っています。部屋をゴミ屋敷にし建物を損傷させたり悪臭や害虫で他の住民に著しい迷惑をかけたりする行為は、この善管注意義務に著しく違反し大家さんとの間の信頼関係を根底から破壊する行為と見なされます。この「信頼関係の破壊」が法的に認められれば大家さんは賃貸借契約を解除し住人に対して部屋の明け渡しを求めることができるのです。ただし強制退去に至るまでには厳格な法的なプロセスが必要です。まず大家さんは内容証明郵便などで契約解除の意思を明確に通知します。それでも住人が任意に退去しない場合は裁判所に「建物明け渡し請求訴訟」を提起します。裁判で大家さんの主張が認められ勝訴判決が出た後、それでもなお住人が居座り続ける場合に初めて裁判所の執行官による「強制執行」が可能となります。執行官は法的な権限に基づき部屋の鍵を開け住人を退去させ中の荷物(ゴミ)を運び出すことができるのです。このプロセスには数ヶ月から一年以上かかることもあります。強制退去はあくまであらゆる手段を尽くした後の最終手段。それは住人にとっても大家さんにとってもそしてその部屋にとってもあまりにも悲しい結末と言えるでしょう。