ゴミ屋敷問題の根底に、統合失調症やうつ病、認知症、あるいはホーディング障害(溜め込み症)などの精神的な疾患が関わっているケースは少なくありません。このような場合、通常の離婚とは少し異なる配慮が必要になります。日本の裁判所は「病める時も健やかなる時も」という夫婦の絆を重んじる傾向があるため、単に病気になったから離婚したいという主張だけでは認められないことがあります。しかし、病気によってゴミ屋敷化し、それによって配偶者が生活を共にすることが不可能になるほどの苦痛を受けているのであれば、話は別です。病気であることが、配偶者に不潔な生活や健康被害を甘受させる理由にはならないからです。ここで重要になるのは、相手方が適切な治療を受けているか、そして家族のサポートを拒絶していないかという点です。もし相手方が病識を欠き、治療を拒否し、ゴミを溜め続けることで配偶者を追い詰めているのであれば、それはもはや救済の範疇を超えており、離婚事由として認められやすくなります。慰謝料については、病気が原因である場合、故意や過失といった「有責性」が弱まると判断され、金額が低くなる、あるいは認められない可能性があります。ただし、病気による行為であっても、配偶者が受けた精神的ダメージは事実として存在するため、解決金という名目で一定の金銭が支払われることもあります。例えば、離婚後の引っ越し費用や新生活の立ち上げ資金を確保するために、家財道具一式をゴミとして相手方の負担で処分させることを条件に、他の財産分与で譲歩するといった戦略的な交渉も考えられます。また、慰謝料を現金で一括で取るのが難しい場合は、将来の年金分割や退職金の分配で帳尻を合わせる方法もあります。このようなケースでは、相手方を追い出すというよりも、福祉サービスや専門の医療機関に繋ぐ努力を最後まで見せた上で、限界を訴えるというアプローチが、法的な場でも、また自分自身の良心の平穏のためにも重要です。病気という難しい背景を持つゴミ屋敷離婚は、法律だけでなく福祉的な視点も持って、慎重に手続きを進めることが求められます。
精神疾患が原因でゴミ屋敷化した配偶者との離婚における慰謝料の考え方